フリクリ オルタナ / プログレ 感想

 戦々恐々再生したところ、嫌味抜きで理想的な続編なのでびっくりし、十数年越しのモヤモヤが払拭される稀有な快楽がありました。
  「退屈で平凡な日常」とカッコを付けずには表記できない手垢まみれの閉塞感をひたすら野暮く、女子高生のリアリティだけアップデートしてベタに再話し、月がきれい』のようなガチ取材感で無難な範囲のファンタジーへと架橋するクレバーな青少年向けチューニングすら回避して、「ネオリベ格差社会当然の帰結としてある日唐突に国民が全員遺棄されて死ぬ」という即物的なカタストロフに猛ダッシュハルハラハル子のエキセントリックすら凡庸に地べたを這う浪花節に回収され、よく『フリクリ』という思い出タイトルで意味も脈絡も欠くチープな現実に囲繞された現代的な終末の予感をあっけらかんと素で描けたなと、謎に嬉しくなりました。
 京アニ辺りのえぐいチューニングしたオタ幻想リアリズムはもちろん、神山健治ノイタミナ辺りの空回った状況意識や金満サブカルにも距離を取り、吉田有里氏を自然体に演技指導してボンクラ歓喜ポイントをも脱臼させたまま、前作の背伸び感とオタ快楽を削ぎ取ったごく普通の青春ドラマを死ぬほど平凡な絵面でまとめたフィルムに、異様な居心地の良さと溜飲が下がる気分を覚えます。
 基本的に低予算の凡作が愛らしいというのはありますが、とくに前作が嫌いなわけでもなく、むしろ凡庸なオタ原体験として普通に憧れ普通に忘れ、「格好良いアニメーションとは大体こういうもののことなのであろう」と雑な理念型として記憶に沈殿していたのですが、実は最初からこの程度のどうでもよい質感で突き放されて描かれるべき主題だったのだなと憑き物が落ちる感覚があり、ダサい映像だからこそpillowsのしみったれ感も素直に沁みるものがあります。
 このシリーズが鮮やかな手付きで純粋抽出してきた「耽美的な思春期のモヤモヤ」というもはや恥じらわしい動員主義的なモチーフと正面から向き合うこと自体、主体の自意識を自覚的に投影する巧緻を競うチキンレースに巻き込まれるのでしんどいという気持ちは重々、しかしであればなおのこと、徹底的に進行しきった大衆個人主義鬱病的快楽主義に行き詰まった状況下の近視眼的な主体の地獄こそ、作品の荒んだ誠実さに敬意を表して記述しておきたい気持ちを新たにし、あらためて時代の退屈さやバッドテイストと見做されているものに付き合い続けていくための元気をもらえました。

 

 そのぶんプログレを再生するのが怖かったのですが、猫耳ヘッドホンを装着した黒髪ロングぱっつんの水瀬いのりが開幕エモい思春期リリックをかました直後、『紅殻のパンドラ』の簡単クラりんみたいに溶けて井上喜久子のファンタジック母親と絡み始めたおかげで、「俺みたいなゴミ向けにめっちゃチューニングされてる!!」と生理的欲動の充足のみをシコシコ満喫、ノスタルジーの捏造と新興宗教あしたのジョー、教室の暗い片隅で世界大火を夢想するオーケン的やさぐれ感の水瀬いのりを前にして、思わずハイレゾ音源で購入した『ご注文はうさぎですか?』チノちゃんキャラクターソングアルバム「cup of chino」*1を爆音再生し「老人が意図的に古いメンヘラ女を再生産してるぞ殺せ!!!」と最新の民族トーテム片手に絶叫しかけたところ、死体イメージで脳味噌が勃起するバタイユ的な水瀬いのりだったのかじゃあ許すよ!!俺と一緒に死と糞便を凝視しよう!!!!!!!!

 記号化された憂鬱と精一杯の空騒ぎをどんどこ投げやりにインフレーションさせ、「もういいのでは?」と途中で辟易してくる半笑いな気分まで含めて、前作のスカムなエッセンスを凝縮させたこれ以外にないような最高の続編と思われ、ちゃんと映画館で罵声と退席が相次ぐ最中にニコニコ顔で観たかったなあと後悔し、これは軽口ではなくわりと本気なのですが、昔『pupa』の先行上映会で黙々と観客が席を離れてゆく様に立ち会って「おれも木戸ちゃん声の妹に人肉食されてえよ??」とボヤいた思い出が我ながらショボすぎて忘れがたく、最近ミリシタやってると木戸ちゃんの馬鹿キャラ演技の厚みと声の圧がヤバくて再度天才を確認しています。

 エヴァやガイナに超越的な意味を託さざるをえない人情に唾吐くつもりはありませんが、尤もらしい言説をほとんど与えられないまま*2美少女アニメの洪水を貪り尽くす青春に賭けた結果、SF・ロボットアニメの伝統と蓄積を当事者的に継承しうる感性を失ったがため、『革命機ヴァルヴレイヴ』の哄笑から『Gレコ』の彼岸的な煮詰まりまでを一貫して軽薄に面白がってきた次第で、何度思い返してもイマドキ10代フリクリ的ポジションに鎮座ましますEGOISTのかっこいい曲をなんか歌ってることになってるやつでおなじみ『ギルティクラウン楪いのりさんのぼんやり美人局ぶりはめちゃくちゃ愛らしく、ところでなんでギルクラを思い出したかというと、この水瀬いのりと同じような猫耳黒髪ロングぱっつんでぴっちりエロスーツを着込んだ竹達彩奈がテカったプリケツでグラフィックインターフェイスをタップしてるシーンあった!!!!!!!!

 今期はバーチャルなんとかを観たせいで下の世代と情報系の方々に対する政治的配慮が消え失せ、『デート・ア・ライブIII』という魂の故郷と『W'z《ウィズ》』の好き勝手ぶりに惚れ直し、『ぱすてるメモリーズ』が「アニメ界のVaporwave」とかひどい悪口を言われてそうで心配ですが、ひどい美少女アニメに対する哀惜と追憶とリフレインの荒野を猛毒ポルノEDで締める流れが崇高すぎます。
 プログレの話に戻ると、オルタナでは意図的に切断した主題であろう、アトムスクとの合一という幼児的全能感への回帰をのみ希求するみっともないピンク髪婆の話、という軸を再度提出し直したのは素晴らしく、自分も遠く過ぎ去ったもはや不可能なエクスタシーの影を追って日々の倦怠を一人騒ぎ立て、思春期の切実な幻想を生きる他者に対して身勝手な欲望のままに嫌味を吐き散らす、クソで嘘つきな中年の側にすでに回ってしまった後悔があり、アニメの感想は本当に書きたくない

 

 最近読んだ本 

BIRLSTONE GAMBIT

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  • 作者: 宇佐見崇之,黄金虫,辰巳寿々人,さいとうななめ,H・T
  • 出版社/メーカー: 密林社
  • 発売日: 2017/01/22
  • メディア: ムック
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 おれも矢部嵩氏と京都でダンスを踊りたかった

*1:本気で参っていた時期があった

*2:与えられたら逆ギレしながら